旅のつばくろ/沢木耕太郎 〜旅した気分になる本〜

新型コロナウイルス感染症が世界を翻弄して1年半くらいになりました。隙をついて旅をしてはみたもののこれまでの旅とは少し違って、何か物足りなさを感じています。その物足りなさを埋めるために、旅にまつわる本を読んで、旅した気分に気分になるのは如何でしょう?

旅のつばくろ/沢木耕太郎

旅のつばくろ/沢木耕太郎

『旅のつばくろ』を連載している『トランヴェール』とは

この「旅のつばくろ」は、JR東日本が運行する新幹線(北海道・東北・上越・山形・秋田・北陸)の座席ポケットに入っている車内紙『トランヴェール』に連載されているエッセイです。東海道新幹線を主に利用しているので、『トランヴェール』にはあまりご縁がないのですが、何度か目を通したことがあり、東日本の魅力的な文化や歴史を紹介している雑誌です。ウェブでも一部読めるので、機会があればぜひ。

www.jreast.co.jp

『旅のつばくろ』には…

新幹線車内紙に連載されているエッセイのうち41編がこの『旅のつばくろ』に収録されています。

 

ノンフィクション作家、エッセイストである沢木耕太郎さんの旅は、密に計画を立てる旅ではなく、行き当たりばったり旅だとのこと。どこぞのテレビ番組で日本地図に向けてダーツを投げて、現地へ行くというのを見て「夢の旅」と思ったとのこと。これで「お!」と思った方は、『旅のつばくろ』を読むと良いのではないでしょうか。

日本航空が行っている少ないマイルでどこかに行ける「どこかにマイル」を彷彿とさせる旅がお好きのようです。私も比較的行き当たりばったりにい近い旅が好きです。行き先は直前に決め、宿だけ抑えてどこに行くか、どこで食べるかはその日の気分です。

www.jal.co.jp

この『旅のつばくろ』に収録されている旅先は東日本です(JR東日本の本だから)。初耳の地域への旅はもちろん、風景が思い浮かぶ地域への旅もありますが、沢木さんの視線で書かれた情景が妄想だけど思い浮かべることができてとても楽しく読めます。沢木さんの若い頃の思い出旅の話も海外での旅の話も少し触れられていますが、国内旅行での人との対話や接点から生まれる旅の話とも言える本かなと思っています。

今、旅をしても人との距離は適切に保たねばならない、もしくは住んでいる地域から出るなといった状況の中で、旅での人とのお話やそこでのおもてなしはもはや懐かしい状態になってしまいましたね。プロの迷子家の私としては人に尋ね尋ね目的地を探すのが常ですし(迷惑)、次の目的地をどこにしようかと人に聞いたりもするので、本当に旅は人が頼りだったりします。『旅のつばくろ』を読んで、改めて旅は人との新たな繋がりよねと思い、繋がりにくい今の時期は旅はがまんしなきゃなと改めて思いました。

心の中で旅をしたい方にはおすすめの『旅のつばくろ』、読んでみてはいかがでしょうか。